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吸血鬼。その1
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2022/05/20 (2022/07/02 更新)

ポリドリ『吸血鬼』その1
https://ncode.syosetu.com/n2276ho/3/
本書は1819年、誤ってバイロン卿の作とされ世に出たDr.John William Polidoriの小説を、2022年4〜5月に萩原が訳したものである。訳文については GNU FDL に拠る free document とする。
原文は一繋がりの短篇であるところ、長いので訳者に於て分割した。

人を吹き散らすロンドンの冬の真っ只中、こんな事があった。100を数える貴族派閥思い思いの宴に、位階はさておき風変わりで噂の貴族が顔を出し。付き合ってられないと言わんばかりに、周りの浮かれ騒ぎを眺め回すのだった。美人の軽い笑い声も、気に障っただけで一睨みに鎮め、無分別を仕出かした胸に恐怖を投げるであろう。この畏怖の念を感じた人々は、それがどこから来たのか上手く言えずに居た。中には原因を灰色の死んだ目、それも作り物の顔に嵌め込んだような、物を見てはいないとしか思えないのに、一瞥して心の中まで見透かしてしまうような視線、頬に落ちたら突き通らないまでも皮膚に重く圧(の)し掛かる鉛の視線を投げてくるその目に帰した者もあった。
その独特なところからか、彼はあらゆる家に招待された。みんな彼に会いたがったし、激しい興奮に慣れすぎ今や倦怠を感じていた人たちまで、目を惹き付けるものが目の前にあることを歓迎した。謙虚に赤面するでもなく強い情熱を見せるでもない、暖かさ皆無な死人めいた顔色にもかかわらず、眉目形(みめかたち)ばかりは美しいもので。悪名高い男たらし共が気を引いてやろう、最低でも「愛情」の印と呼べそうなものを得ようと勝負に行ったもの。マーサー婦人は結婚以来、宴会場で見られる悪漢全ての嘲笑の的であったが、彼の行く手を塞ぎ、ペテン師さながらのドレスを身に着け気を引こうと(無駄ではあるが)相対した。時に、目を合わせたように見えながら、何も見ていないように感じられた。物怖じしない厚かましさにも当惑すらせず、婦人はただ取り残された。成人女性一般が目を惹くこともできなかったとはいえ、女性というものに無関心であった訳では無い。女性に対する僅かな例外として、高潔な人妻と無垢な娘に話しかけたのは、だから中々目立っていた。
しかし、彼には勝利の舌の評判があった。その特異な性格への恐怖を乗り越えようとしてか、それとも明らかな悪徳への憎しみに動かされたのか、貞節を誇りにする女性たちと同じくらい、悪徳でそれを汚す女性たちの中に居たものだ。

同じ頃、オーブリーという名の若い紳士がロンドンに来た。孤児で、幼い頃、妹1人に両親が莫大な資産を遺して亡くなった。財産さえ世話してやれば良いと考えるような後見人達から、彼自身にも遺産は譲られたのだが、より重要な精神の注入などは二線級雇われ共の世話に任せて後見人達は手を引いた結果、判断力より想像力が豊かになった。かくて彼は、帽子職人の見習い多数を毎日台無しにしかねないような、やたらとロマンチックな名誉率直を重んじるに至った。すべての人が美徳に共感すると信じており、悪徳とは単に、ロマンスに有りがちな光景の絵のような効果を狙って、神の摂理により投げ込まれたものと考えるような男であり、陋屋の悲惨とは単に暖かい服の不足に尽きるので、それも折り目継ぎ接ぎ色とりどりの取り合わせによっては、画家の目にも適うものと考えもした。本気で、詩人の夢を人生の現実と取り違えていた。それでいてハンサムで、率直で、金持ちだったものだから、

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